| 季節 |
和 歌 |
訳 |
| 春 |
よそまでは
さそひもはてぬ はる風に
木の下ばかり
花もちりつつ
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遠くまで吹いて行ってしまっつたんでしょうか、
春風は木の下には、残った花が(風もないのに)
盛んに散っていますよ |
| 春 |
春風の
よそにさそはぬ 花ならば
木のもとのみや
雪と積もらん
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春風をさけて咲く花であれば
こんなに木の下にだけに雪のように
花が積もっているでことはないでしょうが |
| 夏 |
青葉にも
しばし残ると しみ花の
ちりてさながら
しげる比かな
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青葉になっても花が残っていたのを見たけれど、
それも散って、もっぱら青葉が茂頃だなあ |
| 秋 |
あくがかる
心のはてよ いづくまで
さやけき夜はの
月にそふらん
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身からはなれた魂はどこまでもゆくでしょう、
清らかな夜の月まで行ったのでしょうか |
| 秋 |
空にのみ
たつ河霧も ひま見えて
もりくむ月に
秋風ぞ吹く
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空にまで立ち上がる河霧、瞬霧が切れて
月の光がさす、秋風がふいたよ |
| 冬 |
むら時雨
晴れつる跡の 山風に
露よろもろき
峰の紅葉ば
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ひつしきり強くふって時雨は止み
、山風が吹く、霧を晴らすよりも早くに
紅葉の葉をはらはらと散らしはじめる |
| 冬 |
分けゆけば
野辺の小篠の 上よりも
袖にたまらで
ふる霰かな |
野中の細い道を小篠をかき分けて行くと、
(冷え込んできて)霰が音を立てて降り出した。
霰が私の袖に溜まる暇もなく、道を急ぐ、
ふりしきる霰の中を
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| 恋 |
かねてより
人の心も しらぬ世に
ちきれはとても
いかか頼まん
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予め人の心も分からない世の中で、
契をしたことでどれほどの頼りとなるでしょう。 |
| 恋 |
思い出づる
雲まの月の 面影は
またいつまでも
わすれかたみぞ
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おもいだすよ、雲の間から出る月を見ると、
その面影は何時までも忘れられない人なのよ |
| 雑 |
塩風の
あら磯かけて おきつ波
猶よせかくる
おとのひまなさ
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波を含んだ風が荒磯をめがけて吹き、
沖の波が岩に寄せる音、ひっきりなしに響く |